
【龍空】すみません 暑さのあまり 故障中
炎天下の中
汗をぬぐいなから
歩いていたある日。
ビルが立ち並ぶ
都会の真ん中
日陰もない歩道で
ふと目にとまったのは
ひとつの自動販売機。
冷たい飲みのもを
求めて近づくと
そこには一枚の張り紙。
「すみません 暑さのあまり 故障中」
その言葉は
よくある「故障中」
の無機質なテープや
印字ではなく
マジックペンで書かれた
手書きの文字でした。
しかも
少しだけ文字がゆがんでいて
急いで書いたような
それでも丁寧なような
そんな味のある筆跡。
思わず笑ってしまった。
暑さに負けたのは
自販機だけでなく
きっと私も同じだったから。
そしてその一枚の紙に
なぜか
じんわりとした
あたたかさを感じたのです。
自動販売機は
無人で24時間
働き続ける現代の象徴。
スマホで飲み物を選んで
キャッシュレスで
支払える今の時代
無駄のない
「買い物」
はごく当たり前になりました。
けれど
そんな中で
出会った手書きの張り紙には
人の存在がありました。
そこには
誰かが
「暑さのせいでごめんなさいね」
と心を込めて
書いた気持ちがあった。
急ぐ日々の中で
ほんの一瞬だけ
足を止めたそのとき
「買う」
だけではない
「つながる」
感覚を思い出しました。
都会にもまだ
人のぬくもりは残っている。
そう思うと
暑さに疲れた心が
少しだけ
軽くなった気がしました。