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【龍空】キンモクセイの香りに包まれる秋

秋の深まりを知らせてくれるのは、空気の冷たさや空の高さだけではありません。ふと風に乗って漂ってくる甘やかな香り――それがキンモクセイです。オレンジ色の小さな花から放たれるその香りは、懐かしさや安らぎを呼び起こし、秋ならではの情緒を感じさせてくれます。

 

キンモクセイの花言葉は「謙遜」「気高い人」「真実」。華やかな香りに比べ、花そのものは小さく奥ゆかしい姿をしています。その控えめさが「謙遜」という意味に結びつき、また周囲を包み込むような香りの力強さが「気高い人」や「真実」といった花言葉を生んだのでしょう。

 

一方で、あまり知られていないのが「隠世(かくりよ)」という言葉です。隠世とは、現世とは別の目に見えない世界を指します。キンモクセイの香りが漂うと、どこか異界への扉が開くような感覚になる人も少なくありません。古くからその芳香は邪気を払うとされ、縁起物としても大切にされてきました。神社の境内や庭に植えられているのも、清らかな空気を生み出すためだったのです。

 

現代の私たちにとっても、キンモクセイは日常を少し特別なものにしてくれる存在です。通勤途中や散歩の道すがら、香りに包まれた瞬間に立ち止まり、深呼吸したくなる。そのひとときが、慌ただしい時間の流れを和らげ、心を整えてくれるのです。

 

秋が進むほどに香りは強まり、やがて儚く消えていきます。その移ろいはまるで季節の象徴。香りを感じるたびに、いまこの瞬間を大切に過ごそうと思わせてくれるのが、キンモクセイの魅力なのかもしれません。

 

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