
【龍空】一竜一猪 ― 才能と個性がぶつかる職場で ―
「一竜一猪(いちりゅういっちょ)」という言葉は、中国の『北史』に見える故事に由来します。北斉の文宣帝が学者・李義深(りぎしん)を評して言った言葉で、「竜のように聡明で優れた面を持つが、猪のように頑固で直情的なところもある」という意味です。つまり、突出した才能と欠点を併せ持つ人のたとえです。
職場にも、この「一竜一猪」タイプの人は少なくありません。
ひらめきや実行力に優れ、誰よりも早く結果を出す一方で、他人の意見を受け入れにくかったり、協調性に欠けるように見えたりする人。そんな人は、周囲との摩擦を生むこともありますが、実は組織にとって大切な存在でもあります。なぜなら、彼らの「猪」のような強い信念が、新しい風を起こす原動力になるからです。
上司や同僚として「一竜一猪」の人と接するには、欠点を責めず、長所を見抜く目が必要です。頑固さの裏には「責任感」があり、融通の利かなさの裏には「誠実さ」がある。
一見ぶつかりやすい相手ほど、実は自分にない視点を持っていることに気づかされます。
また、自分自身が「一竜一猪」タイプである場合もあります。
理屈より直感で動き、人に理解されにくいことがあるかもしれません。そんなときこそ、自分の「竜」と「猪」を意識してバランスを取ることが大切です。理性で調整し、信念で突き進む。両方を活かせたとき、あなたの才能は最大限に輝くでしょう。
「一竜一猪」は、職場における多様性を象徴する言葉です。
完璧な人間などいません。お互いの個性を認め合い、違いを力に変える――それこそが、チームを成長させる最大の秘訣なのです。