
【龍空】助長―力を貸すことと身を引くタイミング
誰かを応援したい、力になりたい。
そう思うのは
とても自然な心の働きです。
特に身近な人の夢や努力を見ていると
「もっと良くしてあげたい」
「早く成果を出させてあげたい」
と思うものです。
ところが、善意からの行動が
相手の成長を妨げてしまうことがあります。
これを「助長」といいます。
昔、中国の故事に
「宋の人、苗を助長す」
という話があります。
ある農夫が
苗が早く伸びてほしいあまり
畑に出て一つ一つの苗を
引っ張って背を高くした。
ところが
次の日には苗はすべて枯れてしまった――。
これはまさに
よかれと思った行為が
かえって害になる典型です。
では、私たちはどの時点で
「手を引く」
べきなのでしょうか。
ひとつの目安は
「相手が自分で工夫を始めたとき」です。
こちらがアドバイスを与えたり
手を貸したりしなくても
本人が自分なりに試行錯誤をしている。
たとえ未熟でも
その姿が見えたら
もう余計な手出しは不要です。
成長には「失敗を通して学ぶ」
時間が欠かせません。
もうひとつの目安は
「こちらのサポートが
習慣化しそうになったとき」。
最初は
「一度だけ手伝うつもり」だったのに
いつの間にか相手が
こちらを当てにするようになっている。
そんなときは
優しさが依存を生み
相手の自立を遅らせてしまいます。
助けること自体は
悪いことではありません。
むしろ人間関係において
大切な徳目です。
しかし
「どこまでが助けで
どこからが助長になるのか」
を見極めるためには
一歩引いて観察する冷静さが必要です。
もし迷ったら
自分に問いかけてみましょう。
「これは相手のため?
それとも自分の安心のため?」
「この手助けがなくても
相手は自分の力で乗り越えられるのでは?」
本当に必要なときに差し伸べられる一助は
大きな力になります。
けれど
必要以上の手助けは
相手の可能性を摘み取ってしまうのです。
助ける勇気と同じくらい
引く勇気も大切にしたいですね。