【龍空】名刺のはじまりは竹簡だった――中国から伝わる礼儀のかたち
名刺の語源はどこから?中国から伝わる“名前を刺す”文化とは
名刺というと、現代ではビジネスシーンの必須アイテムですよね。初対面のご挨拶に差し出す一枚には、その人の仕事や思いがぎゅっと詰まっています。
しかし、この「名刺」という言葉の由来をご存じでしょうか。実は名刺のルーツには、中国で生まれた、とても興味深い文化が隠れているのです。
古代中国では、お互いの家を訪問する際、相手が不在であっても “訪ねてきた証” を残す習慣がありました。その方法が、細長く割った竹や、薄く削った木の札に自分の名前を書き、相手の家の戸口に刺しておくというものでした。この竹や木の札は「竹簡」「木簡」と呼ばれ、まさに名前を刺して伝えるツールだったのです。
ここから「名を刺す」→ 名刺 という言葉が生まれたとされています。
相手への礼儀として、自分の存在を静かに、しかし丁寧に伝える。その心遣いは、現代の名刺交換の精神ともつながるものがあります。
日本に名刺文化が広まったのは、江戸時代以降だといわれています。商人たちが取引先との信頼関係を築くために使いはじめ、明治以降の文明開化とともにビジネスシーンへと定着していきました。今では名刺は単なる連絡先のカードではなく、「私はこういう人間です」という自己紹介であり、いわば自分の“分身”のような存在になっています。
名刺からその人のエネルギーや雰囲気が伝わってくることがあります。色やデザイン、文字の置き方には、その人がどんな思いで仕事に向き合っているかが自然と表れるものです。古代中国で竹簡を戸口にそっと差し込んだあの行為も、きっと相手へ誠実さを伝える一つの しぐさ だったのでしょう。
名刺交換はほんの数秒の出来事ですが、その一瞬に込められた思いは昔も今も変わりません。人と人をつなぐための小さな札は、時代を超えて受け継がれてきた礼儀と心遣いの象徴なのです。
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ほしよみ堂大阪アメ村店
龍空

