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【龍空】懐かしいのに新しい――手拭いの力

先日、道を歩いていた時に、
ふと目に留まった光景があります。

近所のお宅の前で、
ほうきを手に掃除をしている女性が、
頭に布を巻いていました。

よく見ると、
それはいわゆる「姉さんかぶり」。

手拭いや布を三角に折って頭にかぶる、
昔ながらのスタイルです。

子供のころ祖母が
庭を掃くときにしていた姿を思い出し、
懐かしさと同時にどこか新鮮に映りました。

 

姉さんかぶりは、実用的な知恵でもあります。

髪が落ちてくるのを防いだり、
日差しを遮ったり、汗を吸い取ったりと、
掃除や畑仕事にはうってつけ。

昔の人は道具を最小限にしながら、
暮らしを快適にする工夫を重ねてきたのだなと、
あらためて感心しました。

 

その布の代表といえば「日本手拭い」。

細長い形が特徴的で、
手を拭くだけでなく、包む、飾る、巻くなど、
多用途に使える万能布です。

江戸時代には贈り物や広告にも活用され、
現代にいたるまで
廃れることなく受け継がれています。

思えばお祭りのはちまきも、
温泉で肩にかける布も、
多くは手拭いから派生したもの。

使い道を数え上げればきりがありません。

 

今では手拭いは単なる実用品にとどまらず、
デザイン性の高いものが多く出回っています。

季節の柄、伝統文様、モダンなグラフィックなど、
見ているだけで楽しくなるものばかり。

額に入れて壁に飾れば、
ちょっとしたアート作品にも早変わりします。

インテリアショップでも
「手拭いを飾る生活」が
提案されているのを目にしますし、
実際に私の部屋にも季節ごとに掛け替える
手拭いが一枚あります。

布一枚が空間の雰囲気を
がらりと変えてくれるのは不思議な魅力です。

 

姉さんかぶりの女性を見かけたとき、
「昔のものが今でも生きている」と感じましたが、
同時に、
「昔のものが進化している」とも思いました。

役割を変えながら、
時代に合わせて形を残しているのです。

手拭い一枚をとっても、それはただの布ではなく、
生活文化の象徴のような存在。

便利さと美しさを兼ね備え、
現代でも私たちの暮らしに彩りを与えてくれます。

 

時代遅れに見える習慣も、
視点を変えれば新しい発見につながるもの。

姉さんかぶりも手拭いも、
その代表かもしれません。

何気ない日常のなかに、
懐かしさと新しさが同居していることに気づくと、
ちょっと心が豊かになる気がします。

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