
【龍空】浩然之気(こうぜんのき)―心を正す大いなる力
「浩然之気」という言葉は、中国の思想家・孟子の『孟子・公孫丑章句』に登場します。孟子が「我に浩然の気あり」と語ったことで知られ、古来より精神の理想を示す言葉として尊ばれてきました。
この「浩然之気」とは、広くて淀みのない、天地に満ちるような清らかな気のこと。孟子はこれを「義と道によって養われるもの」と述べています。つまり、正しい行いと誠実な心を積み重ねることで育つ、堂々たる精神の力なのです。
現代を生きる私たちは、忙しさや情報の波に押し流され、自分の軸を見失いがちです。SNSでの比較、評価、周囲の声に惑わされると、心は容易に曇ります。そんな時こそ、「浩然之気」という考えが心を支える指針となります。
浩然之気は、一朝一夕で得られるものではありません。正義を貫く小さな行い、嘘をつかず誠実に向き合う勇気、他人を思いやる優しさ――その日々の積み重ねが、目に見えぬ力となって自分を満たしていきます。それは外の状況に左右されない、静かで強い自信です。
この気を保つ人は、どんな嵐の中でも心を乱されず、周囲をも温めます。まさに「天地に満ちる正気」と呼ぶにふさわしい存在。私たちも日々の中で、小さな「正しさ」を選び続けることで、自らの中に浩然之気を育てていけるのです。
外の喧騒に負けない、静かで力強い心。それこそが、現代を生きる私たちに必要な「浩然之気」ではないでしょうか。