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【龍空】 寒い季節の小さな幸せ――肉まんに込められた孔明の知恵と祈り

秋も深まり、朝晩の冷え込みが少しずつ身にしみる季節になりました。こんな時期になると、なぜか無性に食べたくなるのが――あつあつの中華まん、特に肉まんです。コンビニの蒸し器から立ちのぼる湯気の香りに誘われて、つい手に取ってしまう人も多いのではないでしょうか。ふかふかの皮を割ると、じゅわっと肉汁が広がり、冷えた体も心もほっとあたたまります。まさに冬の幸せの象徴ともいえる存在です。

 

ところで、この肉まん(饅頭)のルーツをご存じでしょうか。遡ること約1800年前、時は三国志の時代。諸葛亮孔明が南方遠征の帰途、濁(ばく)という地域の川が氾濫して渡れなくなったときのことです。当時、中国には川の神を鎮めるため「人身御供(ひとみごくう)」として人の首を捧げる風習がありました。しかし、孔明は「部下を犠牲にすることなどできない」と考えます。そこで彼は、知恵を絞って小麦粉をこねた皮の中に肉を包み、人の頭の形に似せたものを作り、それを川に投げ入れたと伝えられています。不思議なことに、その後川の氾濫はおさまり、無事に渡ることができたそうです。

 

この逸話が、饅頭(マントウ)のはじまりとされています。もともとは神への供え物として作られたものが、次第に人々の食べ物へと変化していきました。やがて供物として川に投げるのはもったいないと、祭壇に供えたあと食べられるように工夫され、少しずつ形も小さく、食べやすく改良されていきました。

 

日本に伝わったのは室町時代といわれています。禅僧・林浄因(りんじょういん)が中国から饅頭の製法を伝えたのが始まりで、のちに中華まんや肉まんへと発展しました。今では寒い日の定番おやつとして、冬の風物詩になっています。

 

冷たい風に頬を刺されながら、手のひらにあたたかな肉まんをのせて頬張る――それは、古代から続く人の知恵と祈りが生んだ、小さな幸福のかたちなのかもしれません。

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