【曽我部キキョウ】地名の行方
上京した当初のことです。
「上尾」が読めず、
「え~っと、かみお、ですか」と言うと、
それぐらい読めなきゃダメ、と叱られました。
そのとき思ったのが、負け惜しみの
「放出は読めないくせに!」でした。
よくある地元民の
「難読地名、マウント合戦」
みたいなものです。
ところで、先ほどの上尾(あげお)にしろ、
放出(はなてん)にしろ、いわゆる郊外です。
電車の駅などでローマ字が書いているし、
知っている人も大勢います。
しかし、山間部の集落などになると
地名の読み方を知っている人は
本当に地元民だけです。
過疎化、高齢化の波に飲まれて、
廃村の憂き目にあえば、
そこの地名をどう読むか、
わかる人がいなくなってしまいます。
難読地名であれば、
過去の記録などから
読みを調べることになるでしょう。
さて、ここで一つの可能性に思い当たりませんか。
確かに、その廃村の地名が
どう読めばいいか不明な、
例えば「喜連瓜破」のような文字列であれば
調べようとするでしょう。
(ちなみに、きれうりわり、という駅名です)
でも、そこの地名が、読めないことはない、
「篠山」みたいな文字列であればどうでしょう。
かつての集落を調べようとした人は
首をひねりながらも
「しのやま、だな」
などと言いだしかねません。
知っている人が、一人でもいれば
その人に聞けばいいだけです。
「ささやま」て読むんだよ、と
教えてくれるでしょう。
ところが誰も知らない。
つまり、勝手に読まれ、
それが定着する可能性があります。
それが100年後などになると、どうでしょう。
「本当にここの地名は、そう読むのか」と
気にする研究家が現れても、おかしくない。
文献を漁り、周辺地区への聞き込みをし、
きっとこうだ、という読みに行きついても
それが本当に正しいかは、
過去の地元民しか知りません。
地名の漢字は文字として残ります。
地図上にも、古い役場の資料にも。
けれども、その「正しい」読み方を知る人は
いなくなってしまうこともあるのです。
さて、あなたが住んでいる場所の、その地名。
本当にその読みで合っていますか?
選べる道を増やす、もう一つの見方を
曽我部キキョウ

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