【曽我部キキョウ】名前は魔法より強い ~見ているのは人か、呼び名か
世の中には、怖い女性が存在します。
代表的なのが、「魔女」と「悪女」ですが
どちらが怖そうですか。
魔女といった場合、
童話に出てくる悪い魔女や
箒に乗った、とんがり帽の女性を
想像しませんか。
人間をカエルに変えてしまったり、
薬草を大釜で煮詰めていたり。
一方の悪女というと、
もっと現実的です。
人生をかき回す存在ではないでしょうか。
ところで、「魔女」という言葉は
比較的新しく、
ある種の輸入品です。
英語のwitchはそもそも
悪人ではありません。
キリスト教の勢力拡大とともに
異教の呪術師や民間信仰の担い手が
悪魔と契約したものと扱われ、
魔女狩りの時代に一気にイメージが悪化しました。
日本では明治以降に
西洋の文化が大量に入ってきて
その際に英語のwitchを訳す必要がありました。
その時の翻訳者が「魔女」としたため
字面的に、とても悪そうになってしまっています。
ではこの輸入以前に、
日本に魔女がいなかったのかというと、
確かに「魔女」はいませんでしたが、
似たような存在はたくさんいました。
巫女、祈祷師、イタコ、陰陽師、薬師。
ただし、それぞれ別の、
職を表す言葉で呼ばれていたのです。
しかし、彼女らは「魔女」とは呼ばれません。
そしてそれらは、職能を表す言葉でもあるためか、
恐ろしさや悪さのようなものは
つきまといません。
ではなぜ「魔女」というと
怖いもの、悪いもののように聞こえるのでしょう。
これは漢字の持つ力であり、
ラベルの問題でもあります。
魔女という言葉が誕生したとき、
薬草に詳しい女性も、
不思議な知識を持つ女性も、
まとめて「魔女」になりました。
そして「魔」の字がついたことで、
必要以上に恐れられることになったのです。
人は分類することが好きで、
その分類にラベルを貼って
一安心することが多々あります。
さて、怖い人だから「魔女」になったのか、
「魔女」と呼ばれる人だから怖いのか。
人は世の中を理解しやすくするために
名前を付けます。
しかし、その便利さの陰で
本物を見る目を曇らせることがあります。
童話では、魔女の魔法によって、
人が姿を変えられることがありました。
けれども、現実には
名前が変わっただけで
違う目で見られることがあります。
そう考えると、人の見え方を変える力は
魔法ではなく、名前の方が
強いのかもしれません。
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